ゲーム万場


〜ネコリセット万場〜

「放課後、ゲームセンターで 電子の精たちに捧ぐ」 [2012/9/21]

放課後ゲームセンターで 「放課後ゲームセンターで
2010年11月22発行
マイクロマガジン社
著者:箭本進一

 今回は箭本進一さんの本「放課後ゲームセンターで 電子の精たちに捧ぐ」をご紹介します。

 まず著者についてですが、有名どころ(?)では「超クソゲー」を執筆、近年では「ユーズドゲームズ」系譜の雑誌「ゲームサイド」「シューティングゲームサイド」等で執筆されております。僕は「ゲームサイド」の「グラディウス」特集で著者のファンとなり、それ以来、ゲームサイドは5割方を著者目当てで購入していた、という経緯があります。
 では著者の文のどこらへんが気に入っているかというと、「そのゲームへの思い入れが伝わってくる」「プレイ当時の様子(環境・熱気)が伺える」というところです。自分にとって著者の文章は「そのゲームが遊びたくなる」文なのです。
 2010年前後のゲームサイド(旧:ユーズドゲームズ、ユーゲー)は、紙面の内容が「ゲームを取り上げる為に褒める」ような記事が多く見受けられ、一癖あるだけのゲームをなんとかして面白く見せるように紹介するというやや強引なところが散見され、平たく言えばネタ切れ感が漂っていました。
 その中において著者の文はそれぞれのゲームに対して、ゲーム内容以上にそのゲームへのこだわりを持った文章を書かれていた為、必然と目に付いたわけです。

 では本書の内容に移りますが、本書はゲーム&ウオッチからドラゴンクエストまで、アーケード、コンシューマ、そしてパソコンに至るまで、筆者の幅広いゲームプレイ暦によるエピソードが綴られています。と言うと「なんだ、思い出が書かれてるだけの自己満足文か」と思う方もいらっしゃるでしょうが、概ねそんな感じです。本書はゲームの内容についてはあまり触れられていません。筆者がそのゲームを遊んでいた当時の環境、人間関係からゲーセン事情に至るまで、当時を偲ぶ内容が多く書かれています。
 様々なレトロゲームとの思い出についてプレイヤー目線で書かれている為、たとえそのゲームを遊んでいなくても、筆者が体験したことをありありと思い浮かべられて身近に感じられるのが魅力という、レビュー本とはまた赴きが違う構成となっております。

 各項目はタイトル別になっており、グラディウスやロックマン等の懐かしいタイトルばかり並んでいます。
 個人的に感銘を受けたのは、「ゲーム&ウオッチ」での「友達のゲーム機を壊してしまった」というテーマ。僕にも似たような経験があり、読み進めるのが辛かった程です。なんと謝ったら良いか、どうやって償えば良いか、そして、なんて言い訳しようか、という僕の経験した感情そのものがその文から伝わってくるようでした。
 また、ストリートファイターIIでは当時のゲーセンの熱気と他ユーザーとのやりとりが書かれています。その中でも、初めて乱入されて負けた時の感情は、もちろん僕も経験があります。突然乱入されて頭が真っ白になりながら対戦した思い出、悔しい気持ち、やり場のない怒り、もうゲーセンに来たくないとまで思った負の感情。でもひとたびプレイヤー対戦の面白味を知ってしまったらまた行きたくなる。こういった共感できる部分が至る所で読み手の記憶をも呼び起こします。
 正直言うと収録タイトルの半数以上は遊んだことのないタイトルなんですが、この本を読むと収録されているゲームに限らず、ゲームそのものが無性に遊びたくなるんですよ。本サイトもそういう衝動に駆られるというか、プレイ意欲を刺激するサイトを目指しているのですが、本当に難しいものです。

 近年はオールドゲームを扱った書籍が減った影響で、本書のような文を楽しむ機会も少なくなってしまいましたが、著者には新作・旧作に関わらず、これからもゲームについて色々な側面を語ってくれるのではと期待しております。

放課後ゲームセンターで

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